たかげべら

Written by Takahito KIKUCHI

企業フェーズの移り変わりとエンジニア組織のマネジメント

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こちらは「Engineering Manager Advent Calendar 2024」4日目の記事です。

qiita.com

昨年も本アドベントカレンダーに参加しており「フルリモートワーク企業における 1on1 事情」を題材に記事を公開しています。よろしければこちらも是非お読みください。

takagerbera.com

2024年のヘプタゴン

さて、そんな2年目となる Engineering Manager アドベントカレンダーなんですが、勤務先である株式会社ヘプタゴンは2023年と比べて大きな変化を遂げました。

まずは「人数が急増して組織化のフェーズに突入した」こと。俗に「20人の壁」と言われるものですね。

ヘプタゴンは2024年で13年目になるのですが、ありがたいことに毎年プラス成長できており、本格的な事業成長へ舵を切るべく採用を本格化させました。

採用の話は「2024年 ジンジニア アドベントカレンダー」で触れようと思いますので割愛しますが、これまたありがたいことに2024年は8名の採用を達成。従業員数が2023年の倍となる15名となり、創業当初の「ピザ2枚チーム*1組織」からの方向転換を余儀なくされます。

2つめの大きな変化は「親会社・デジタルキューブとの TOKYO PRO Market 上場」です。会社のお知らせに詳細がありますので本記事では割愛しますが、プロ投資家とはいえ従業員でも顧客でもない「市場という第三者の目」が入ることが今後考えられ、子会社であっても利益追求や適切な組織ガバナンスの維持は必要になるでしょう。

そうなると経営者としては「企業経営を通して叶えたいビジョンの達成」だけでなく企業経営の継続、いわゆる「ゴーイング・コンサーン*2」を達成する状況を目指さなければなりません。

そのためには経営者は将来を見据えた打ち手の検討や、融資や投資を得るための交渉など「トップとしての仕事」に集中するため、プレイヤーとしての仕事を移すためにミドルマネージャーの役職を作り権限委譲を進めていく...訳ですが、そうするとこれまでフラットだった組織に階層が生まれ、コミュニケーションコストが多少なり増大するのは避けられません。

まとめると、現在のヘプタゴンは「組織化への過渡期」と言え、個人の動きが強かった状況からの脱却が求められている...のが、人材マネジメントを任されている私の見え方です。

企業のフェーズが変わったことで具体的に何が課題なのか

ここまでは一般論を交えつつ、ヘプタゴンの置かれている状況を簡単に説明してきましたが、現場目線では何が課題になっているのか。

大小様々あるのですが、ヘプタゴンで一番の課題となっているのは「部門横断での課題共有・解決のしづらさ」と認識しています。

これまではトップも含めて、各メンバーが抱えているタスクや案件を相互に把握できる見通しが良い状況だったのですが、組織化が進んだことで分業体制が生まれました。

ですが、これまで複数部門に跨がる領域を担当していたメンバーが特定の部門に属したことで、コミュニケーションに必ず「部門」という名の緩衝地帯が生まれ、課題解決のスピードやクオリティが低下する現象が生じています (もちろん数百、数千の企業と比べるとまだマシと言えるレベルではあるのですが)。

これらの解決策として「課題の持ち方を個人からチームに変える」「アーキテクト職のメンバーが部門横断的なマネジメントを行う」などの方策を通じてソフトランディングを行っているのですが、短期間で感覚的にフィットする組織的な動きにたどり着くのは難しいと感じました。

また、新規メンバーが増えたことで、暗黙的な了解のもと進んでいた各種制度や仕事の進め方の明文化が必要になったり、エンジニアが活躍できる開発者体験の高い組織設計・開発が急務になったりと「個の力を集める」から「集の力を作る」への転換が求められているのですが、他の役割と兼業している立場故にプレイヤーとしての役割から抜け出せないジレンマを日々感じています。これは反省ですね。。。

そんな中で、2024年7月には「どんなチームであり続けたいか」を言語化した7つのバリューを制定しています。こちらも詳細は割愛しますが、一番根っこの価値観は共有できるよう言語化し、組織化が進む中でも全員で成長できる会社を目指しています。

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やってみて意外と評判が良かった「5%リフレクション」

ヘプタゴンは普段フルリモートなのですが、四半期〜半期に1回ペースでオフサイトのミーティングを行っています。

オフサイトミーティングでは経営状況の共有や懇親を目的としたレクリエーション、今後の方策など抽象的な議論などを行うことが主なのですが、2024年第二四半期に行ったオフサイトミーティングでは、先述したアーキテクトのメンバーから提案された「5%リフレクション」を実施し、これが意外と評判良かったので「組織化を破るヒント」として紹介します。

「5%リフレクション」とは「仕事」「家族」「個人」の3軸から、最も感情を揺さぶられた事柄を共有し、対話と内省を促す手法。主に EO (Entrepreneurs' Organization) で行われているもので、私は EO に所属していませんが外部のメンターと類似のものを定期的に行っています。

この5%リフレクションを行うときに一番大事なのは傾聴と共感。アドバイスをするにしても一般論で行うのではなく、私は ... と過去の実体験に基づく自分事に置き換えて共感の意を示すのが重要。問題の捉え方は人それぞれだと思いますが、どんな問題でも話してくれたことに感謝し、受け入れることが大切になります。

普段の業務とは無縁になる可能性も秘めるこの手法ですが、行ってみると自己開示や他者理解が進み、メンバーどうしの一体感が醸成されるのを感じます。参加したメンバーからも比較的好意的な感想を得られているので、30名以下の "オンサイトでギリギリ集まれる規模の組織" では有効かもしれません。

おわりに

他の業務と兼務にはなりますが、人材マネジメントを担当する立場から見えるヘプタゴンの組織成長と向き合う壁の変化について、日々感じていることを含めて紹介いたしました。

成長フェーズに伴い向き合う課題が変化するのは頭の中では認識・理解していたものの、こうして実体を持って感じられると「会社は生き物」であることを強く感じますね。

ですが「新しい課題が生まれる = 健全な成長を遂げている証」だとも思いますので、引き続き組織全体を俯瞰し、取り組める範囲のなかで適切なマネジメントや施策の提案・遂行などを通じてこれらの課題に立ち向かいたいと思います。

*1:スパン・オブ・コントロールの範囲内でチーム人数を抑えることの意。Amazon 創業者ジェフ・ベゾスが提唱したと言われている。

*2:企業や組織は将来に渡って事業を継続し、存続し続ける前提を示す、主に会計分野で用いられる用語