2023年8月11日に開催された「IPPP Iwate 2023」にて、最近の近況報告を行いましたので、本ブログでもその内容を紹介します。
このイベントは岩手県立大学に縁のある方が集まって近況報告するもので、正式名称を「Iwate Prefectural University × Practice and Progress」といいます*1。私は昨年から参加し始め、今年も引き続き参加させていただきました。大学を卒業してからすっかり盛岡市および滝沢市近郊に行くことが無くなってしまったので、同窓会とネットワーキングを兼ねたイベントとして盛岡・滝沢方面へ行く理由付けになっています。
発表内容について
本イベントでは「BizDev 2年目で気がついた『圧倒的成長』の真実」と題して、現職に就いてから1年経過した今の振り返りを中心に、一時期ネットミームと化した「圧倒的成長」というキーワードを正面から考える内容の発表を行いました。
資料の中では圧倒的成長を「自身が想定した成長の仕方を現実が上回ったときに感じる成功体験およびその感覚」とし、成功体験のトリガーやその前提条件を簡単にまとめた...つもりでしたが、見直すと内容が抽象的過ぎて、喋りの有無を踏まえても聞いている側は実感が沸きにくい資料に。ですので、ここから発表内容のフォローを少しだけ行います。
現在行っている仕事は数年前、特にソフトウェアエンジニアの頃と比べると満足度が高く、成長を実感できる場面がとても増えました。これは今の仕事が単純な技術・技能の巧さだけでは評価されない、コンセプチュアル・スキル (物事の本質を見極め、個人や組織の可能性を最大限に高める能力) が求められる抽象的・創造的な領域に足を踏み入れたからと考えています。
抽象的・創造的な領域の仕事の多くは決まった答えがなく、仕事の意味やその先に創り上げる未来を自ら問い考える場面が度々訪れます。その度に自分自身と向き合ったり、同僚やビジネスパートナーの方と議論を交わしたりして物事の解決へと向かうのですが、あるとき、その過程に喜びを感じて満たされている自分に気付きました。仕事の性質が変わったことで、知らない間に「精神的な豊かさ」を手に入れていたのです*2。
この感覚こそが、当日の発表では触れられなかった「成長そのもの」の正体で、この感覚を頻度高く実現もしくは再現できる状態が「圧倒的成長」ではないか...と思っています。
「全員が成長を望んでいるのか問題」は難しい
聞き手にとって実感が沸きにくい内容だったのは、抽象度が高かっただけでなく、聞き手の持つ「成長したい欲求」が各人でバラバラだったのも理由の一つかもしれません。上記で説明した「圧倒的成長」は誰もが再現できる訳ではありませんし、誰もが望んでいるものでもないでしょう。
私が上記の定義に基づく「精神的な豊かさ」に由来する成長に対して貪欲なだけなのも十分あり得る話です。それを裏付ける話として、ちょっと前に職場で行われた社員限定のライトニングトーク (LT) 会の話を、簡単にですが紹介します。
その会では過去投稿で触れているマナビDX Questへの挑戦や、プロボノ活動への参加をテーマにした発表を行ったのですが、その際「なんで菊池さんはこうも活動的なんですか?」と質問を受けました。
私はこれらの活動を通じて経験知や人的ネットワークを早期に獲得するだけでなく、自らの価値観を常に最新にし、コンセプチュアル・スキルを発揮できる状態を保ち続けています。期間が空いたので質問への正確な回答は忘れてしまいましたが、参加動機は概ねこのようなものです。
これらの活動を通じて 30 代後半を迎えた今でも新たな知り合いが増え続け、その度に未知の自分を知れるので私は楽しいのですが、聞き手のリアクションを見るとそうでもない人が多そう。受けた質問内容を踏まえても「違う分野に足を踏み入れるほどの挑戦はリスクが高すぎて行えない」と多くの方は考えているのかもしれません*3。
個人であれば「行動する or しない」の選択は個人に委ねて問題ないのですが、これが組織の人材開発視点になるとかなり難しい。上記の通り「圧倒的成長」は個人の感覚依存なので組織が厳密な定義付けを行えない上に、仮に行ったとしても所属する全員がそれを望んでいるとは限りません。だからこそ 1on1 形式のマネジメント手法や OKR のようなフレームワークが流行している...という認識です。
この辺りの話を資料に少しだけ盛り込む構想はあったのですが、スライド枚数の増加やそれに伴う発表時間の増加を嫌ったので省略しています。実際は時間を余らせて発表を終えているので、盛り込んでよかったかもしれません。
発表を終えてみて
本イベントでは近況報告 + テーマトークという構成で発表をしたのですが、一連の感じたこと通じて改めて「成長」という言葉の裏側にある曖昧さに気付かされました。周囲にいる方々が必ずしも成長を欲しているとは限らないだけでなく、そもそも自分自身が異様に成長を求める、いわば「外れ値」である可能性に気付けたのは、新たな発見かもしれません。
職務柄、人事制度設計に関わる機会が増えているので、知見が蓄積されていたら来年の IPPP や他のイベントなど何らかの機会で共有したいですね。