たかげべら

Written by Takahito KIKUCHI

社員合宿で「エンジニアのダークサイド」に関する発表を行った話

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2023年11月9日、10日の2日間を使って行われた社員合宿で「エンジニアのダークサイド」に関する発表 (ライトニングトーク) を行いました。本記事を通じて発表内容を広くお伝えすると共に、資料を作る際に考えたことなどを紹介します。

社員合宿そのものについては、勤務先であるデジタルキューブグループ公式 note で発信されておりますので、そちらをご覧ください。

note.com

発表資料について

当日使用した発表資料はこちら。2023年8月に起こった自称「恒心教」教徒による脅迫ファックス事件を題材に、エンジニアのダークサイドとは何かや、ダークサイドに落ちない/落とさせない最後の砦としての職業倫理を私なりに解説したものとなります。

www.docswell.com

私の勤務先は親会社も含めて従業員の半数以上がエンジニアなのに加えて、OSS コミュニティをはじめとする「IT コミュニティへの貢献」が企業文化として強く根付いている企業です。

heptagon.co.jp

www.digitalcube.jp

今後もコミュニティと相互共生の関係を続け、よい企業文化として残し続けるために「コミュニティの価値を毀損しないためにはどうすべきか?」というメッセージを、技術や知識に拠らない「真のプロフェッショナルのあり方」と共に、現在所属している社歴が浅いエンジニア社員に対して伝えるべく作りました。

エンジニアがダークサイドに堕ちる例は先述の事件から、自身の振る舞いがコミュニティの価値を毀損させる例には X (旧 Twitter) を中心に騒がれていた PyCon APAC 2023 のネットワークオペレーションセンター (NOC) の取った行動を、それぞれ直近のバッドプラクティスとして採用しています。

pyconjp.blogspot.com

加えて、エンジニア職以外の社員も聴講者になることや、当日はグループで人材開発を担当する人間が私だけという事情が重なり、職業倫理の説明や氷山モデル (行動や振る舞いを氷山の一角として考え、行動だけに着目するのではなく、水面下の要因に着目して物事を考えるやり方) を用いたリーダシップ論を盛り込むなど、エンジニアへのメッセージを軸にしつつ、多くの社員が自分事として考えられる内容の資料となりました。

資料作成の背景

現実に起きた事件を題材としているのは上述の通りなのですが「この事件で感じたことを誰かに伝えなきゃ!」と突き動かされたのは、情報セキュリティ系コミュニティの会合で「どうやら容疑者に SecHack365 の修了生が関わっているらしい」と話を聞いたのがきっかけ。

事実関係については SecHack365 のリリースに詳しく記載されているので本記事では省略しますが、これらのコミュニティで言われ続けてきた「(情報セキュリティに関する実務能力教育を受けた若年層の方たちを) ダークサイドに堕とさないようする」を今一度整理し、自分の言葉で若者たち当人やそこに強い影響を与える大人たちを動かす必要があると考え、この資料の作成に至りました。

sechack365.nict.go.jp

資料において「(エンジニアにとっての) ダークサイド」がいわゆるブラックハッカーやクラッカーという定義になっているのは、こうした作成までの流れから来ているものです。

発表の評判

発表の評判はまずまず。かなり抽象的な内容になった印象は感じていたので、これは想定の範囲内。それ以上に「喋り方や振る舞いの場慣れしている感」が印象に残った様子でした。

LT会のトリは、ヘプタゴンのビジネスデベロップメント・菊池さんによる「エンジニアよ、ダークサイドに落ちるな(職業倫理を考える)」というものでした。菊池さんはLT慣れしている感があり、安心して聞くことができました。LTはライトニングなだけに、パッと見てわかる資料や、聞き取りやすい言葉を選ぶことも大事なんですよね。

引用元 : デジタルキューブグループ、全社合宿レポート - デジタルキューブグループ 公式note

資料自体はピッチプレゼンの構成をベースに「1スライド1メッセージ」を徹底したり、アウトラインからメッセージを絞り込んで刺さる言い回しを考えたり、同じ話題はグルーピングしたりと基本に忠実に作っているつもり。あと「自身も若年層に対して強い影響を与える大人である」意識のもと、自信に満ちてるような力強い喋り方をすることは多少意識していました。

おわりに

社員合宿とはいえ「エンジニアのダークサイド」という難しいテーマで発表する機会が得られたのは貴重な経験でした。本当は情報セキュリティ系かマネジメント系コミュニティの場で取り扱おうかと考えていたのですが、速報性を重視してこのタイミングとなりました。場を与えてくれた企画担当の社員に感謝申し上げます。

本来こうしたプロフェッショナルとしての振る舞いや考え方は私たちのような「ある程度経験を積んだ大人たち」が新入社員や若年層の社員に伝えなければならないのですが、OJT を中心とする通常の社員教育では業務知識中心で、なかなか伝えられないのが現実ではないでしょうか。資料を作りながら自身の経験を振り返ってみましたが「改めて考えたことなかったな...」と思うぐらいです。

プロとして仕事をするにあたり、お客様に損害を与えるのみならず、社会秩序に悪影響を与えることはあってはなりません。この資料が少しでも多くの方の目に触れて、意識変容に役立てられてもらえたなら幸いです。