経済産業省と情報処理推進機構 (IPA) が開催する「マナビDX Quest」の2022年度プログラムに参加し、一連のコンテンツを完走しましたので、今回はその話をします。
プログラムの概要
「マナビDX Quest」は、経済産業省が提供するデジタルトランスフォーメーション (DX) の学習に関する情報を発信するプラットフォーム「マナビDX (マナビ・デラックス)」上で展開される、実践型のデジタル推進人材プログラム*1。経済産業省がかつて展開していた「AI Quest」を前身としており、課題解決手段を「AI」から「DX」に範囲を拡大していることを特徴としています。
プログラムは大きく分けて「ケーススタディ教育プログラム」と「現場研修プログラム」の2種類のコンテンツで構成されており、一連の流れを通じてAIもしくはデータサイエンスに関する能力と、DXコンサルテーションに関する能力を身につけることができます。2つの得られる能力のうち前者については、後述する複数のケーススタディ課題のうち選んだものによって変わります。
私が参加した2022年度プログラムは、学生・社会人を問わず広く参加を募っていたとともに、充実の内容にも関わらず参加費無料という大盤振る舞い*2。2022年初頭、時の政権がデジタル人材育成に4000億円もの莫大な予算を投入することが報じられ、リスキリングなどのキーワードと並んで話題になったことが記憶に新しいですが、その結果の一つが恐らくこれでしょう。
この記事を書いている2023年4月現在、経産省から実施報告書が公開されており、その内容によると両コンテンツ合わせて2500人近くの方が参加した模様。広くDXに触れてもらうという観点では、一定の成果を果たしたものと思われます。
「ケーススタディ教育プログラム」について
2つのコンテンツのうち「ケーススタディ教育プログラム」については、事務局から与えられたケーススタディ課題を指定期間で解く学習プログラム。プログラム全体で1個もしくは2個のケーススタディを、1個のケーススタディ課題につき9週間かけて解いていきます。与えられたデータや補助教材を使いながら独力で行うことを基本としているものの、必要に応じて参加者用 Slack 内で相互に教え合い・学び合いながら進行することができるため、経験の浅い学生や非IT系職種などデジタル化スキルに不安が残る方でもフォローができる構造なのが特徴です。
ケーススタディ教材のテーマは「AI導入プロジェクトを一気通貫で疑似体験する内容」と「データドリブンなDX推進を一気通貫で疑似体験する内容」の2種類があり、各回で参加者の希望に沿うものを選択することができるようになっています。一部のケーススタディ課題は、前身となった「AI Quest」の企業研修プログラムでの取り組み内容がベースになっており、自主学習であってもDXのリアルを感じてもらおうという意思が感じられました。課題の一部は、上述した報告書と同じページにサンプルとして公開されています。
そして、各回のケーススタディを通じて作成した成果物は、以下の基準で評価されます。
- 各回ごとに定められている締め切りまでに課題を提出できたかどうか
- 参加者間の相互評価で良好な結果が得られたかどうか
どちらもプログラム終了後に付与される修了証 (オープンバッジ) に影響し、前者は締め切りに遅延なく完走した場合は修了証「Gold」が、一つでも遅延したものがあると修了証「Silver」が与えられ、後者はケーススタディ課題ごとにその結果に応じて参加者間に順位付けがなされた後、全体の上位5%に食い込むと「総合優秀賞」として表彰されます*3。
私はケーススタディを2つ受け、いずれも「データドリブンなDX推進を一気通貫で疑似体験する内容」を選択。1回目・2回目とも締め切りに遅延なく完走したため修了証「Gold」を取得し、1回目のケーススタディについてはなんと「総合優秀賞」に選ばれました。
コードを書いたり、データの分析・解析を行ったりする現場から離れて久しいため、前線で活躍されている方々には敵わないと思っていたのですが、この結果を見て「まだまだ捨てたもんじゃない」と自信に繋がりました。評価していただいた皆さん、ありがとうございます。
「現場研修プログラム」について
もう一つのコンテンツである「現場研修プログラム」は、1回目のケーススタディ課題を完走した参加者と「AI Quest」に参加経験のある方を対象に、チームで実際の中小企業のDX課題について取り組むプログラム。全国から参加したマナビDXの取り組みに賛同する DX へ取り組む意思のある企業が、全国からオンラインで参加している参加者で構成されたチームとともに、実際の事業課題のもとDXを推進するのが特徴となっています。
私は2回目のケーススタディ課題と並行して、こちらの現場研修にも取り組ませていただきました。取り組んだ内容は秘密保持契約の都合で割愛させていただきますが、業界特有のドメイン知識が不足する中、チームの皆さんや研修先企業の担当者の協力の甲斐もあり、何とか完走することができました。本プログラムに参加する動機がこの企業研修プログラムであり、本業と合わせて忙しくなる中、自分のカラーを出しつつ成果に結びつけることができたのは、関係してくださった方のおかげです。この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。
企業研修での取り組みと生まれた成果の概要は、ほかのチームのものと合わせて、上述した報告書と同じページにて公開されています。
感想・総評
本プログラムは、1回目のケーススタディ課題から企業研修プログラムの終了まで約半年に渡る長い取り組みでしたが、取り組んだことの苦労に見合う多くの経験が得られました。
特に企業研修プログラムでは、多様かつ実力に富んだチームのメンバーに恵まれたと同時に、彼らから影響を受けるだけでなく、私からも発信することで何らかの貢献を果たせたことが一番の思い出であり、誇りです。普段、仕事やプライベートでは絶対に絡むことの出来ない人と、偶発的な出会いによって成果を生み出せる柔軟性と瞬発力はこういったものでしか鍛えられないので、貴重な経験だったと思っています。
今年度以降も開催されるかは分かりませんが、機会があればまた挑戦したいですね。