たかげべら

Written by Takahito KIKUCHI

ITと経営の架け橋に。ITコーディネータ(ITC)に認定されました

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2023年6月に経済産業省推進資格「ITコーディネータ(ITC)」の認定を受けることができました。2月くらいから、仕事とは別に細々と認定に向けた取り組みを進めてきたのですが、無事認定を受けることができて胸をなで下ろしています。

なぜ私がITコーディネータの認定を受けようと思ったのか、認定までどんなことを行ったのか、今後これをどう使っていくつもりなのかを、自身の備忘録も兼ねてお話ししていきます。

そもそも「ITコーディネータ」とは何か

「ITコーディネータ(ITC)」は、ITと企業経営両方の知識を持ち、経営目線から事業とITの融合をはかる「IT経営」のプロフェッショナルを認定する資格・制度。もともと通商産業省(現在の経済産業省)の国家プロジェクトを通じ、民間企業の意見を取り入れ設置された歴史的経緯から、民間資格ながらも「経済産業省推進資格」という特異な立ち位置にあります。

itc-shikaku.itc.or.jp

また「ITコーディネータ」の名称は、特定非営利活動法人ITコーディネータ協会によって商標登録されているため、無資格者がITコーディネータを名乗ることは商標侵害の恐れがあります。そのため、事実上の名称独占資格であるともいえるでしょう*1

ITコーディネータ認定までの道筋

ITコーディネータの認定を受けるには「ITコーディネータ試験の合格」と「ケース研修の修了」の2つをクリアした上で、ITコーディネータ協会への届け出を行う必要があります。

有効期限こそあるものの、試験の合格とケース研修の順番はどちらが先でもよいというのがミソで、私は試験の方を先にクリアし、資格の認定を受けています。ただし、想定されている一般的な流れは「ケース研修 → ITコーディネータ試験」のため、先に試験をクリアするとケース研修の開催まで間が開いてしまうのは気をつけた方がいいかもしれません。事実、私は2022年度3月試験に合格し、2023年度5月開催のケース研修を修了して認定を受けているため、試験からケース研修まで約3か月の間が開いてしまいました。

ITコーディネータ試験について

ITコーディネータ試験は、CBT方式による4択問題で実施。ITコーディネータ協会より発行されているテキスト「IT経営推進プロセスガイドライン」を出題範囲とし、同書の中から幅広く問題が出題されます。

itc-shikaku.itc.or.jp

本来は必須問題60問、選択問題40問の合計100問解くことになるのですが、私は既に経営管理修士 (MBA) の学位を取得しているため、必須問題のみを対象とする「専門スキル特別認定試験」の方で受験しました。回答時間も問題数の減少に伴い短縮されるのですが、それ以上に出題範囲が狭まることと、受験費用が半額になるのがとても大きい。2月中旬に対策を始めて、3月初旬に受験して一発合格できる程度には恩恵があったと思います。

採点結果は受験したテストセンターから終了直後に受験記録として貰えるため、合否が即座にわかります。ちなみに私の結果はこんな感じ。

ITC試験結果

巷では正答率60〜70%くらいがボーダーと言われていますが、まさにその通りですね。ケース研修なしだと、IT経営推進プロセスガイドラインを読み込むしか試験対策ができないため、2週間ほどの対策期間を考慮すればよくできた方ではないでしょうか。言い換えれば、IT・経営コンサルタントとして十分な実力がある方にとっては試験自体はそこまで障害にならないといえるでしょう。

ケース研修について

試験合格後は、ITコーディネータ協会が認定する団体が主催する6日間のケース研修を受講・修了します。私は数ある団体のうち、一般社団法人ITC-EXPERTが主催するオンライン型研修を受講しました。

itc-expert.or.jp

研修は「経営レベルでITを導入し切れていない中小企業に対して、ITCとしてどう支援していくか」をテーマに、複数人のチームで経営計画の策定から業務改善提案、IT導入計画の策定、実施状況のモニタリングといった実業務に沿った内容を、8時間×6日のスケジュールで行います。

新型コロナウイルスの感染症法上の分類が緩和されたため、オフラインで実施するプログラムもあったようですが、私が受けた研修はすべてオンラインで実施。Zoomのブレイクアウトセッションを行き来しながらケースをこなしていく様は、MBAスクールでオンライン講義を受けているかのよう。

私が受講したケース研修に参加していた方は、これから独立を考えているシニアコンサルタント、提案型営業ができる社員を増やそうと検討中の研修担当者、キャリアアップを考えるITベンダーに勤務中のSEなど様々。普段の仕事では接しない方たちとのコミュニケーションはとても新鮮でした。

ケース研修の難易度自体は、MBAスクールのそれと比較すると易しめで、日々の業務の合間で十分こなせる内容かと思います。週ごとにレポート課題と予習課題があったものの、私は2〜3時間程度の時間確保で対応。このことから、試験同様にケース研修も十分な実力がある方にとってはそこまで障害にはならないでしょう

資格認定と一連の内容を踏まえての感想

先述したとおり、試験の合格とケース研修の修了の2つをクリアし、協会に申請するとITコーディネータとしての認定が受けられます。

ITC認定証

試験と研修自体はそこまでではなかったものの、やはり気になるのが約25万円という認定取得までの金銭的負担の大きさ

  • ITコーディネータ試験 (専門スキル特別認定試験) : 9,900円
  • ケース研修 (6日間総額、資料代込み) : 220,000円
  • ITコーディネータ認定 申請料 : 22,000円

MBAスクールほどではないにせよ、個人で負担するにはなかなかの金額*2。今後の人脈形成などに役立つ可能性が高いとはいえ、気にならないといえば嘘になります。そして、取得難易度を考慮すると、費用対効果を生み出すためには取得してからの使い方が一番重要ではないかというのが今のところの感想です*3

取得動機と今後の展望

最後に、私がITコーディネータを取得しようとした動機ですが、大きなものでは以下の2つです。

  • ITスキル標準 (ITSS) レベル4 に該当する資格取得
  • 自治体、政府系方面へのコネクション拡大

前者は、情報処理技術者試験「ソフトウェア開発技術者 (現在の応用情報技術者に相当)」を所持し、ITSSレベル3までは到達していたのですが、10年近くそこで停滞しており、自身の殻を破るためのきっかけとして着目したのがITコーディネータでした。結果、すんなりと認定まで事が運び、記録に残る形で自身のスキルを証明できたため、目標達成といえるでしょう。

後者は、以前に紹介したマナビDX Questの企業研修プログラムで一緒になった方からの紹介がきっかけ。その方がその筋に詳しく「持ってるとチャンスに繋がると思いますよ!」と話されていたため関心を持った格好です*4

takagerbera.com

ITCとして所属する団体にもよるのでしょうが、ふるさとCo-LEADのような国主催の協働プログラムへの招待が流れたり、ビジネスマッチ東北のようなマッチングイベントに専門家として参加できたりするらしく、ここに個人としての活動の幅が広がる可能性を感じ、今回の取得・認定に至っています。

これらは即効性のあるものではないため、現在の勤務先で成果を上げつつ、個人としての情報発信をブログやSNSで地道に行うぐらいしかやりようがないものの、行動の一つ一つが明日の自分を変える糸口だと信じて、日々の活動を精力的に行っていきたいと思います。

*1:我が国のIT系資格において、名称独占なのは「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」のみ

*2:おそらく企業研修の一環として受けさせるのが正しい姿なのでしょう

*3:MBAを取得したときも同じことを考えた気がする

*4:この話を聞いてから試験対策を始めたので、文字通りの電撃作戦だったと思います