2023/9/9 に2023年度「マナビDX Quest」の 地域企業協働プログラム説明会が、今年度の参加者および修了生を対象に実施されました。昨年度は「企業研修プログラム」という名称だった取り組みですが、今年も引き続き行われるようです。
今年度のマナビDX Quest はこの地域企業協働プログラムのみの参加を検討しており、今年度からの変更点を知る目的で説明会をオンライン聴講していたのですが、会の中では初参加と思わしき方からの質問が多数登場し、関心の高さと共に企業協働への不安が窺えました*1。
本記事では、2022年度のプログラムの内容を一通り経験して得られた知見から、本説明会で寄せられた質問を勝手に答えてみようと思います。2022年度のプログラムがどのようなものだったか、私がどのように取り組んでいたかは過去の記事をご覧ください。
はじめに
- 本投稿の内容は、2022年度のマナビDX Quest 企業研修プログラムいち参加者の意見です
- 2023年度およびそれ以降に開催される内容とは異なる可能性があります
- 質問の内容は文章量を抑える目的で単純化しているため、多少ニュアンスが異なります
- 実際の説明会で行われたやり取りは、参加者用 Slack で事務局が共有するものを確認してください
チームビルディングに関する質問
チームの組成は知り合い同士で行ったか。それとも事務局が用意したイベントなどでゼロから組成したか
私が所属したチームはお互いを知らない5人が集まって組成したチームでした。事務局が用意した機会を一切使わず、参加者用 Slack 上でのやりとりだけで組成。こうなったのは参加の決断が遅れて、事務局が用意したイベントに参加できなかった...という背景があります。
チームを組むにあたってスキルチェックなどは行ったか
チームを組成するにあたり、私たちはスキルチェックを行っていません。説明会でも触れられていましたが、Slack 上で自己申告されたスキルなどを拝見し、チームで不足しているものをお持ちの方や「この方と組んだらきっと楽しいだろう」と思う方に声がけしています。
チームを組むにあたって重視した点は何か
上記の質問とほぼ同じ回答なので詳細は割愛。AI やデータサイエンス、DXの経験豊富な方よりも、プログラムに対する目的や姿勢が合う方と組んだ方が満足できると思います。
チームのメンバーは全て同じケーススタディ (PBL) に取り組む人で構成したか。仮にその場合はスキルや属性に偏りは出ないか
メンバー構成はスキルはビジネスアナリスト×2、AI エンジニア×2、プロジェクトマネージャーで、若干エンジニアリング寄りだったものの、比較的バランスが取れていた方だと思います。組成までの経緯もあり、メンバー全員が同じケーススタディというのはありませんでした。
チーム内での分担は、具体的にどのようなものだったか
プロジェクト管理やリサーチ、データ分析などの作業が発生しましたが、プログラムで定められているリーダーがやるもの以外の分担を厳密に定めるのはあえてしませんでした。チーム全体で「本業と異なる個人のチャレンジ」を尊重する方針にしたのがその理由です。
しかし、成果物までの締め切りが近かったり、データ分析や資料作成など個人の得手不得手が色濃く出たりする場面では、スキルに応じた作業分担を行っています。
チームの組成もしくは組成中チームへの参加に必要なアクションは何があるか
説明会で触れられた通り、参加者用 Slack や事務局が用意したイベントなどで積極的に行動を起こすのが肝要です。受け身でも声がかかる可能性はありますが「絶対参加したい!」と思うなら、自ら行動を起こすのがベターではないでしょうか。
取り組みへの負担に関する質問
企業協働に割く時間はどのように確保したか
後述するケーススタディの時間もそうですが、個人ワークの時間を確保してから逆算でその他の予定を立てるのをしていました。その時々の都合で予定が多少ブレてしまうのは仕方ないものとし「まずここでやる意識」を持つのが、やり切るのに必要だと思います。
ケーススタディ (PBL) 第2タームとの両立は可能か
ケーススタディの第2タームとの両立は可能ですが、双方の最終成果物をほぼ同時期に作成・提出するのに注意が必要です。特に企業との協働でデータ分析や PoC (概念実証) が絡む「パターン2」を選択した場合は、作業を優先してケーススタディや企業に提出する最終報告書の作成が疎かになるのは十分あり得ます。
後述する協働先の期待に応える話にも共通しますが、取り組み初期でゴールやスケジュールの合意形成を図ると後の予定が立てやすく、多少は両立しやすくなるのではないでしょうか。
企業協働の負荷は、ケーススタディ (PBL) と比較してどれくらいか
私の感覚だとケーススタディの方が大変でした。企業協働では途中、メンバー全員でのリサーチやデータ分析を行いましたが、作業を分担したため、一人あたりの負荷は少なかったように思います。いっぽうケーススタディは、およそ2週間ごとのデータ分析に資料作成、そして中盤と終盤2回の相互レビューをすべて一人で行うため、単純な負荷はこちらが高かったです。
ただし、企業との調整で生じる負荷は作業と別に発生するので、調整事に苦手意識のある方はまた違う感触を持つかもしれません。
個人のスキル面に関する質問
初学者でも企業協働に参加可能か
マナビDX Quest 側が定める条件さえクリアしていれば、AI やデータサイエンス、DX の初学者でも参加可能です。極端な話、チームメンバーと協力して地域企業協働プログラムを完走すれば、学生だろうが無職だろうが業務経験に類する経験を得られます。しかもオープンバッジでそれが客観的に証明できる...いい時代になりましたね。
企業協働にアプリケーション開発スキルは必要か
「製品レベルのデータ分析・検証、AI モデルを含むアプリケーション開発」は企業協働のスコープから外れるため、取り組み自体にアプリケーション開発スキルは不要です。
開発スキルよりも自らの役割から「相手に対して何ができるだろう」という Give を考えられるの方が重要ではないでしょうか。この考え方の具体例は、経産省から出ている「デジタルスキル標準」にある「期待される役割」のスライドに書いてあります。
ただ、データ分析や初歩的な検証を含む「パターン2」や、初期仮説を立てる段階で分析を行う必要が出た場合は、アプリケーション開発スキルがあると物事が進みやすいので、持っていて腐ることはありません。
その他
参加にあたって現職への配慮などは行ったか
説明会で触れられた通り、現職の就業規制や秘密保持契約に依るので、企業協働に参加する場合はこれらを確認し、必要に応じて調整が求められます。副業可能な会社であれば比較的調整が行いやすいのではないでしょうか。
また、現職への配慮だけでなく、協働先への配慮も当然ですが必要です (企業協働で得た支援先の情報を現職で使わないなど)。
プログラム終了後、同じチームの参加者や協働先企業と継続的な交流が発生したか
私のチームは企業協働プログラム終了後、継続的な交流はあまり行えていません...。協働先企業も同様です。ただ、このあたりは相互の関係性に依るようで、メンバーと交流が続いている方や、協働先企業からフリーランスとして継続的にお仕事をいただけている方もいるようです。
協働先企業の期待に応えるためには何が必要か
先述した「ケーススタディ (PBL) 第2タームとの両立は可能か」でも触れましたが、取り組み初期でゴールやスケジュールの合意形成を図るのが肝要だと考えてます。これを行うと同じものの見方による成果測定と、必要に応じた期待値コントロールが可能になるためです。
特に協働先企業が「DX への過剰な期待」を持っていた場合、その期待に頑張って応えようとすると、本業以上に疲弊する可能性は否めません。「頑張ったけど成果が出ない」「協働先から認められない」という、疲弊から始まる士気の低下や更なる疲弊につながる悪循環を避けるために、取り組み初期での合意形成は大事ではないでしょうか。
おわりに
質問と私の経験に基づく回答を一通り書きましたが、私が考える企業協働で大事になる要素はセルフマネジメントとチームビルディング、協働先との合意形成の3つになります。
2023年度プログラムも無償で行われており、DX だけでなくチームで働く経験など得られる貴重な機会なので、検討中の方はこれらを意識して挑戦してはいかがでしょうか。
*1:当ブログの一番人気記事がマナビDX Quest なのもそれが窺えます