2022年11月からの2か月間、経済産業省が展開するデジタル化推進人材育成プログラム「マナビDX Quest」にある、参加者が地域の中小企業へDX推進人材として支援を行う「現場研修プログラム (現在は『地域企業協働プログラム』に名称が変更)」へ参加し、そこで感じた「DXしたい企業が外部デジタル人材とうまく付き合う方法」を、参加者のいち意見として紹介します。
本記事は「マナビDX Questで得たもの Advent Calendar 2023」10日目に寄稿した記事です。
マナビDX Quest に参加した感想は、過去の記事で紹介しています。アドベントカレンダー経由で入られた方などは、よろしければこちらもご覧ください。
地域企業との協働で感じた、外部デジタル人材とうまく付き合う5つのポイント
地域企業との協働を終え、振り返った時に感じた「DXしたい企業が外部デジタル人材とうまく付き合う方法」を、本記事では以下の5つのポイントに絞って紹介します。
- 「ありたい姿」と外部人材の関係性を明確にする
- 早期にプロジェクトのゴール、マイルストーンを描く
- 丁寧なコミュニケーション
- 謙虚さと相手へのリスペクト
- 最初から完璧を求めない
団体や人物を特に指定してないものは、DXしたい企業と外部人材双方ともに気をつける要素として、以後の説明を扱います。
ポイント1 : 「ありたい姿」と外部人材の関係性を明確にする
まず最初に外部人材を受け入れる企業で「ありたい姿」と外部人材の関係性を明確にしておくのが重要だと感じました。
具体的には、外部人材の登用を検討しているプロジェクトが「専門かつ戦略重要性が高い業務 (いわゆるコア業務))」かつ「短期的に自社で人財を賄えない業務」の両方を満たすと、活用の意義が生まれやすいのではないでしょうか。
協働する側の目線でこれらの関係性が明らかでない場合は、プロジェクト管理者や経営者から早めに説明を受けるのが望ましいです。次に説明するポイント2で大きく躓きます。
ポイント2 : 早期にプロジェクトのゴール、マイルストーンを描く
次に大事だと感じたのは、プロジェクトを構成する人員の中でプロジェクトのゴールや、実践内容や成果物を含めたマイルストーンを、早期かつ具体的に描くこと。
プロジェクト内容が具体化されると、円滑な議論の進行や個別業務の非同期化がやりやすくなるだけでなく「あれ、今何をやってたっけ?」と進行にブレが生じた場合のより所となります。
特に地域企業協働プログラムのような、受け入れ先企業と外部人材の双方が初見でワークしなければならない時、未知の人間に対する不安が先行すると思います。こういったときは「まずはこれをやってみよう」ぐらいの軽い気持ちでプロジェクトの全体像を描き、早期に合意形成が行えると、物事が進むのではないでしょうか。
ポイント3 : 丁寧なコミュニケーション
3つめのポイントは、受け手への配慮をした丁寧なコミュニケーションを心がけること。
ポイント2で述べたとおり、外部人材が関係するプロジェクトはとにかく不安が先行します。これを何とかできるのはコミュニケーションと接する時間の長さしかないので、自身でコントロールできるコミュニケーションをまず何とかする...という発想です。
相手方とのコミュニケーションで不安の感情が発生するときは、概ね「返信してほしいのに返信がない」場面。そんなときは、以下のように「返信が発生しないと考えられる要因」をリストアップし、必要であればフォローを入れると良いでしょう。
- 「返信をしてほしいこと」が伝わっていない
- 返信期限を決めていない
- 内容が伝わっていない
- 送る側の温度感が伝わっていない
- ただ単に時間がかかっている
もっともフォローが必要な状況は、概ね送り手の配慮が足りない状況なので、メールやテキストチャットひとつとっても丁寧なコミュニケーションを心がけるべきです。特に専門用語や社内用語を多用した「分かってる前提のコミュニケーション」が、配慮不足になりがちな印象を私は持っています。
関係者が多い場合やコミュニケーションスタイルが異なる企業・業界が相手の場合は、あらかじめコミュニケーションに関するグランドルールを決めてしまうのも一つの方法です。
ポイント4 : 謙虚さと相手へのリスペクト
4つめのポイントは、相手方に期待だけを押しつけず、行動や経験に対し尊敬の念を持って接すること。書籍「Team Geek」で言われる「HRT(Humility/Respect/Trust)」のマインドですね。
外部人材の多くは「専門家」として扱われるので、地域企業協働プログラムで相対するような地域企業は「きっとなんとかしてくれるだろう」と、多くの期待を寄せてしまう...言い換えれば「丸投げ」になると感じました。
その裏側には「専門性に対する信頼」がある訳ですが、他方へ期待を一方的に押しつけず、双方歩み寄って良い落とし所を探りながらプロジェクトを進めると、満足度の高い終わりを迎えられると考えています。
外部人材側も受け入れ企業の状況が整っている、特にデジタル化やIT戦略に対する理解や浸透が進んでいると一方的に思いこんでしまうと、理想と現実のギャップに悩まされるでしょう。
ポイント5 : 最初から完璧を求めない
最後のポイントは上記と関連しますが、お互いに最初から完璧な状況、完璧な進捗、完璧な成果物を目指さないこと。よく「プロジェクトは生のもの」と言われるとおり、当初決めた計画が最後まで滞りなく進むことはなく、状況に応じた計画修正が求められます。
このとき、本当に重要なのは「いかに早く正しい方向へ軌道修正できるか」なので、途中の軌道修正を許容できる空気を作るのは、プロジェクト立ち上げ期でとても重要です。ポイント2でプロジェクトのゴール、マイルストーンを描く際に「まずはこれをやってみよう」と軽い感じが良い、としたのはこれが理由になります。
もちろん起こってしまった事象に対して、勇気を持って軌道修正を進言するのは大切ですが、双方気持ちよく過ごすために合意形成は最初の段階で行っておきたいです。
おわりに
ここまで2022年度のマナビDX Quest「現場研修プログラム」を通じて感じた「DXしたい企業が外部デジタル人材とうまく付き合う方法」をまとめてきましたが、正直なことを申し上げますと、私目線では当時のチームでこれができませんでした。
本記事ではその理由を割愛させていただきますが、少なくとも相手が受け入れてこそ全てが有効に働く手法に間違いありません。
だからと言って相手方とうまく付き合うのを諦めるのではなく、1つでも良いので良いと感じたことを粘り強く続けるのが肝要ではないでしょうか。
本記事が外部人材、協働先企業双方にとって何かのアドバイスになれば幸いです。